春がくる

春がくる。あの日を境に東北に春がくる。

花は咲く。荒地にも、砂浜にも。

「さあ、進め!」と急かす風が吹き抜ける。

そこにはまだこころはいないのに。

だから、君はゆっくり行こうよ。ゆっくり。

僕はまやかしの春をまとって行くよ。少し前を。

何度目かのには本当の春に出逢えるかもしれない。いや、出逢えないかも知らない。

それでもまた次の春のために魂の集うあかりを灯そう。

春がくる。

春がくる。