『小さな畑』

『小さな畑』

この「小さな畑」は佐々木勇三郎さんが綴った震災体験を読ませていただき、浮かんだままを詞に、感じたままを曲にしました。

震災は多くの人々から多くの物と愛する人を奪って去りました。私自身は家を流出し危険区域という括りで帰ることを許されず居場所を失いました。が、家族を失わずに済んだことに感謝する日々です。そんな中で出会わせて頂いた佐々木さんご夫婦はとても前向きで素敵で、直ぐに憧れてしまうほどでした。そんな出会が、失ったものを数えるより出会うことやものを数えて行こうと思わせてくれたのです。そして、音楽がどれほど自分や家族に必要なものであったかを思い知らされました。物というもの全てが波に消えた中、娘はアルバイトでお金を貯め一番に中古のギターを買いました。生存するための必修では勿論ありません。しかし、私達には生きるために必要不可欠なものなのだと…

管楽器を愛する夫は取り敢えずと、おもちゃの様なピッコロトランペット買い、楽器ではありませんが息子はカメラを、そして私は先日やっとギターを買いました。それぞれが、新しい相棒に出会ったのだと思います。

 

「もういいでしょう! 震災のことは…」と耳にする度、次は君が、君の家族が災害に奔走させる番かもしれないよと言ってしまいそうになります。歌うことを遠慮しようと考えた時期もあります。しかし、だからこそ伝えて行こうと決めました。若い方々の前で歌わせていただける時には、

「皆さんには1000年後の子孫を守るための使命があります。どうか、これから生まれるお子さんに、お孫さんに伝えて下さい。『大きな地震が起きたら逃げろ!とにかく高いところを目指して逃げろ!』と…」

こんな風にお話をさせていただきます。遠くにお住まいの彼らは被災地を支えたいけどどうしていいのかわからないと言います。どうすれば良いのでしょうか?とも聞かれることがあります。そんな時は伝えて下さい。とお願いします。家族に、友人に、ご近所さんに…。少しでも沢山の方々に飽きずに懲りずに伝え続けて欲しいとお願いをします。私自信も命ある限り伝え続けようと思います。

 

こんな風に思わせて下さったのも佐々木さんかもしれません。海底のヘドロの畑を蘇らせようと実の成る木を植え「自分は生きている間に食べられないかもしれないけど良いんです。」と笑顔でおっしゃる佐々木さん。まさに勇気と進む力を下さいます。

 

そして、感謝を込めて、心を込めて歌おうと思います。聞いていただこうと思います。

 

1000年後の誰かのために…

 

歌詞

『小さな畑』

 

波にあらわれた 小さな家の小さな畑

一度は逃げ出すことを思っていた

あの日あなたが

ここで泥と戦ってくれなければ

あの日あなたの

こつこつ器を洗う背中に出会わなければ

きっと 放り出していたでしょう

家も 畑も この風景も

 

今はまだ 海へと足は向かないけれど

ビルの街から ここへとやって来る

この小さな畑が 待っている気がして

 

 

友が送ってくれた 秋蒔きの蓮華草

待ちきれずに 春だけれど蒔いてみた

その種は

見事に芽吹き 海風を緑に香らせ

菜の花は土と

蝶々たちを癒し また種を蓄えて

私に勇気と進む力をくれた

あの日のあなたの背中のように

 

今はまだ 妻を喜ばす実は生らないけれど

二人並んで 腰を屈めていると

この小さな畑に 守られている気がして

 

 

今はまだ 海へと足は向かないけれど

あの日あなたが尽くしてくれた この器は

私に勇気と進む力をくれる

 

あの日あなたが尽くしてくれた この家が

この小さな畑が 待っているから