作曲のお仕事

誰かの書いた歌詞に曲をつける。

作曲というお仕事。

自分で曲を書くとき、「言葉(歌詞)」と「音(メロディー)」が同時に頭の中で流れだすことが多い。それでも、どちらかと言えば「言葉」が先行型ではある。

しかし、他の誰かが書いた「言葉」に「音」を乗せることは、私にとってはとてもハードルの高いこと。初めてご依頼を頂いたとき、お受けしたものの正直震えるほど怖かった。

何故なら、そこに並ぶ「言葉たち」は、その方の大切な「分身たち」だと思うから。どこから手をつけて良いものやら、それはそれは戸惑い、怯えた。

何度も、何度も、何度も…。ただただ繰り返し読む。

何度も、何度も…。読みつづけて何日目だろうか。

音がポロン♪♪♪…とこぼれ落ちた。

それは一瞬の出来事で。

それはとてつもなく気持ちのいい瞬間で。

 

しかし!

直後に襲う不安。

「これでいいのだろうか?」

自分の中で生まれたメロディーは言葉にもう一つの命を吹き込めているのだろうかという不安。

打ち消すように歌いつづける。

何度も、何度も、何度も…。ただただ繰り返し歌う。

何度も、何度も…。歌いつづけて何回目だろうか。

自分の中から生まれたメロディーは不安を旅して戻ってくる。

それは一瞬の出来事で。

それはとてつもなく安堵する瞬間で。

 

さぁ!録音してみよう。という気になる。

後は言葉の持ち主がどんなふうに感じてくださるのかをただただ待つだけ。

 

「こんな感じになりました。いかがでしょう?」と添えて送る。

 

「いかがでしょう?」と言いつつ

「もう何も出ない。」が真実。

 

この繰り返し。

毎回「空っぽ」になる。

そしてまた言葉に「力をもらって」生む。

 

さてさて、半世紀をとっくに過ぎた私はどこまでついていけるのだろう。

今年ももう終わる。

来年も…